心臓疾患の原因と予防改善

1. 心臓疾患とは

1. 心臓疾患とは

冠動脈が詰まり心筋が壊死する。毎日10万回以上といわれる心臓の拍動は心筋の収縮によってなされています。心筋へ血液を通じて酸素と養分を供給しているのは冠動脈で、心臓に冠がかぶさったように覆っているので、この名称がついています。

冠動脈には3本の大きな枝があり、そこから中小無数の血管が枝分かれしています。そのなかの幹線に動脈硬化が起こり内腔が狭くなり、血管の内膜に傷がつくと、血小板が凝集して血栓が形成されます。すると血流が急激に途絶え、そこから血液の供給を受けていた心筋細胞は酸素不足に陥り壊死してしまいます。これが心筋梗塞で、血流の減少・途絶えが一時的で心筋細胞が壊死まで至らないものを狭心症といいます。

心筋梗塞は狭心症が悪化してなるものが約60%、前兆に気づかないものも含めて何の前ぶれもなくいきなりなるケースが30~40%を占めるといわれています。いずれの場合も、多くは胸部の激烈な痛みを伴いますが、なかにはまったく痛みのない無痛性心筋梗塞もあります

発作の時間は数十分からときには数時間継続し、そのまま死亡する人も少なくありません。死亡する人の半数は発作から1時間以内に、しかも3割は初回の発作時に死亡するという統計があります。したがって治療は一刻一秒を争います。CCU(冠動脈疾患集中治療室)のある病院にどれだけ早く搬送できるかが、救命及び予後の鍵を握っています。

発作中に致命的な不整脈や心不全を合併することも多く、脈のあるうちに病院へたどりつけるのは半数程度だともいわれています。

同じ循環器疾患で1951年から日本人の死因の第一位を占めてきた脳卒中は、1970年代前半から減少しはじめ、死亡率は、1982年にがんより下がり、85年には心臓病よりも下回り3位になっています。しかし、動脈硬化が引き金となる狭心症や心筋梗塞の虚血性心疾患は増えつつあります。高脂肪食が増え、食生活が欧米化に近づいているためといわれています。

心臓病で亡くなる人の約半数がこの心臓疾患で、狭心症と心筋梗塞があります

狭心症は酸素不足の状態が一時的で回復するのに対し、心筋梗塞は冠状動脈が完全に塞がってその先の血流が途絶えて心筋が壊死してしまう病気です

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2. 心臓疾患の症状

胸に激痛が走り30分以上継続する

息切れ、動悸、胸痛などの前兆を感じることもありますが、胸部の突然の激痛で始まることが大多数です。痛みは左胸というよりも胸部中央、胸全体の場合が多く、左肩、左腕、首、下顎などに痛みが放散する場合も珍しくありません。

狭心症も胸痛が伴い「重苦しい」「鈍痛」「締め付けられる」「息がつまる」などと表現されますが、じっとして耐えることは可能です。発作は通常数十秒から数分で、30分を越すことはほとんどないといえます

それに対して心筋梗塞は「胸の中をえぐられるような」「心臓を握りつぶされるような」など、表現は人によってまちまちで、なかには顔面蒼白になり冷や汗を流して、もだえ苦しんで失神する人もいます。痛みに耐え兼ねて転げ回ったり、吐気、嘔吐をもよおし、失禁してしまう人や、死の恐怖感にとらわれる人も少なくありません。発作も30分以上から数時間も続き、ときには断続的に数日間続くこともあります

時間帯としてはいつでも起こる可能性がありますが、午前6~10時、午後7~10時の二つの山があります。休息状態から活動状態への移行期、あるいはその逆の移行期に起こりやすいといえます。安静にしている時か、身体を動かしているときかは、あまり関係がありません。

また、全体の2~3割の人が、吐き気がする、何となくだるいといった程度の自覚症状しかなく、痛みはまったく感じなかったという人もいます。これは痛覚に問題があるからで、糖尿病患者、高齢者などで、神経線維に異常をきたしている人に見受けられます。

激しい胸痛を起す紛らわしい疾患としては、肺梗塞、解離性胸部大動脈瘤、胸部大動脈瘤破裂などがあります胆石、胃・十二指腸潰瘍などの発作に似ているところもあります。したがって、それらの疾患との鑑別も重要です。

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3. 心臓疾患の合併症

死亡率の高い不整脈と心原性ショック

心筋梗塞の合併症は重篤なものが多く、死に至ることも少なくありません。

◇不整脈

代表的な合併症が不整脈です。不整脈は心臓が通常のリズムで拍動できなくなる疾患で、脈が速くなる頻脈性とゆるくなる徐脈性があります。いずれにせよ60~100回の平均拍動から大きくずれ、リズムも不規則になったりします。

死亡率の高い不整脈としては、頻脈性では心室細動、徐脈性では高度房室ブロックがあります。どちらも心臓のポンプ機能が極度に失われ、血流が停止するので、電気ショック、ペースメーカーをつけるといった救命処置がとられないと、多くは突然死に至ってしまいます。

◇心不全と心原性ショック

心筋梗塞の発作より、心不全もしばしば起こります。心不全はよく心臓の疾患と混同されますが、病名ではなく、血液を全身に供給できなくなって起こる一連の症状を指します。

心不全の特徴的な初期症状は息切れです。軽度だと運動時ていどですが、重度になると安静にしていても苦しくなります。臓器や組織の血液循環が極端に悪くなりますので、むくみも出ます。

心原性のショック状態に陥ることもあり、手足が冷たくなり、冷や汗が出て、皮膚や指先などが紫赤色になるチアノーゼになります。進行すると意識障害が起きます。ショック状態にあるときの脈拍は微弱で頻脈になります。

血液循環不全により、肺うっ血、心臓ぜんそく、呼吸困難などを起して死亡する人もいます。

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4. 心臓疾患の予防

動脈硬化の危険因子を遠ざける

何より誘因である動脈硬化にならないことです。それには、肥満、高脂血症、高血圧症、糖尿病、高尿酸血症を避けることであり、その予防策として食事に対する注意は必要です。すでにこういった病気にかかっている場合は、なおさら厳密な食事療法を実践して、動脈硬化を阻止しなければなりません。

例えば高血圧では塩分の制限、糖尿病では炭水化物、総摂取カロリーの制限、高脂血症ではコレステロール食の制限、高尿酸血症ではプリン体を多く含んでいる、もつ類などの食品の制限といった具合です。

動脈硬化は血中コレステロール値が高くなると進行が早まりますが、HDL値は35mg/dl以下、LDL(低比重リポたんぱく=悪玉コレステロール)値は140mg/dl以上になると要注意といわれています。

1年ごとの健康診断で数値をチェックしましょう。ただし、疾患のある人はもっとこまめに調べる必要があります。

コレステロールを除去する働きのある食品アジ、サバ、サンマ、イワシなどで、背の青い魚に大量に含まれているEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が注目されています。

海藻やゴボウのような根菜など、食物繊維の豊富な食品も腸内でコレステロールを吸着する作用がありますので、結果的に血中コレステロール値を減らすことになり、同じように注目されています。

血管壁の弾力を保つためには良質のたんぱく質の補給も欠かせません。豆腐、牛乳、魚肉なども毎日とるようにしてください。ビタミンC、ビタミンEを多く含む緑黄色野菜などの食品は、動脈硬化に大きく関わっているとみられる体内の活性酸素の発生を抑制する作用があるといわれています。積極的に摂取するようにしましょう。

生活習慣を見直しましょう

◇食生活・・・・動物性脂肪の摂り過ぎ、不規則な食事など、食生活の乱れは最も危険!まずは食生活の見直しからはじめましょう

◇運動習慣・・・・毎日の生活でできる運動からスタートさせましょう。ウォーキングは心肺機能を鍛えることができる有酸素運動として最も有効的

◇生活習慣・・・・不摂生、過度の飲酒は要注意です。とくに百害あって一利なしのたばこは、すぐにでも禁煙をはじめましょう

◇定期的検診 職場や地域での定期検診や健康診断を利用しましょう。 医師の診察 ちょっと費用はかかりますが、心臓ドックや人間ドックをするのもおすすめ!

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5. 狭心症とは

1. どんな病気

冠状動脈の一部が狭くなり、血流が悪くなることで、必要な血液を得るのが困難になる箇所ができ、その部分が酸素不足に陥り、胸痛、圧迫痛、動悸、息切れなどの症状を起こす病気

◇労作性狭心症・・・昼間、階段を駆け上がるなど何かの動作に伴って痛みが起こる
◇異型狭心症・・・1日のうちで決まった時間帯、夜間、ことに早朝の安静時によく起こる

2. 主な症状

◇一般的には胸の中央が痛みますが、人によってはのどや下顎、歯、耳などが痛むことも
◇痛みは「ぎゅっと締めつけられるような」「圧迫するような」「焼き火箸で胸をかき回されるような」などと表現されます
◇発作は1~10分程度でおさまることが多いようです

3. 発作がおきたら

◇まずニトログリセリンやニトロールなどを舌下頓服すると、1分くらいで効き目が現れます

4. 治療法

労作性狭心症の場合。
◇心臓の仕事量を減らしたり、心臓の筋肉への酸素供給量を減少させるような内科的治療
◇冠動脈を流れる血液量を増やすための外科的治療
・ 大動脈ー冠動脈バイパス術 ⇒ 開胸する必要があります
・ 冠動脈形成術 ⇒ 皮膚の上から血管を突いて行えるため、患者に与える負担は少ない

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心筋梗塞とは

1. どんな病気

◇冠状動脈の一部が極端に狭くなったり完全に詰まってしまった場合に起こる病気
◇詰まった先の部分には、血液が行かなくなり、心臓の筋肉が死んでしまう=心筋壊死
◇原因は、血管壁に付着したアテローム(粥状硬化)
・ 付着したアテロームによって血管が狭くなったり、アテロームの破裂による血栓の形成など

2. 主な症状

◇何の前ぶれもなく急に発作が起き、胸が焼けるような激しい痛みに襲われ、その痛みは30分以上
◇あぶら汗、呼吸困難、冷や汗が出て、死ぬかもしれないという恐怖感を伴うことも少なくありません
◇痛みは狭心症よりも長く続き、痛みの程度も一般的に狭心症より強い

3. 発作がおきたら

◇ニトログリセリンやニトロールは無効か、効果があっても十分ではありません
◇激しい胸の痛みを感じたら、一刻も早く救急車を呼び、医師の診察を受けることが必要

4. 治療法

◇経皮的冠動脈形成術 ⇒ 冠動脈の閉塞・狭窄した部分をカテーテルを使って拡げる血管内の手術
・ 風船やステントと呼ばれる金属などを使って血管の内腔を拡げます
◇冠動脈バイパス術などの外科的治療

5. ストレスの心臓・血管への影響

◇慢性ストレスが続くと、免疫力の低下や動脈硬化など、身体の老化現象が起こりやすくなります
◇そこに急性ストレスが加わると、急激な血圧上昇や血液の凝固などの変化に身体が耐えきれず、急性心不全や心筋梗塞の発作が起きやすい状態になるのです
◇緊張の持続の後で急にほっとするのも、ある意味で急性のストレスになるので、休息の取り方に気を付けなくてはなりません

6. 不整脈・・心臓からの危険信号

◇血圧の低下、冷や汗、胸の違和感や苦しさ、目の前が暗くなるなどの症状を感じる時には要注意!ひどい場合には、意識がなくなり、失神を起こすこともあり、生命に関わる危険性もあるからです
◇自覚症状を感じたり、健康診断などで不整脈があったら、一度は専門医の診察を受けましょう

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高血圧症と心臓疾患

1. 高血圧症と心臓疾患

◇狭心症、心筋梗塞、いずれもその発生に高血圧が大きく絡んでいます。
◇高血圧 ⇒ 冠状動脈の動脈硬化 ⇒ 狭心症 ⇒ 心筋梗塞。狭心症を経て心筋梗塞に進展するケースがほとんどです
◇心臓疾患にはならなくても、高血圧の状態でいること自体が心臓の機能に過重な負担をかけ、心臓の左心室肥大から心不全が起こる危険性もあります

2. 持病や既往症を軽く見ない

毎年、ジョギングやマラソン中に倒れ、そのまま亡くなる人が跡を断ちませんが、そのほとんどは心臓病を指摘されていたり、高血圧で治療中だったという人が少なくありません。 運動は健康にとって大変いいのですが、高血圧であったり、心臓に疾患を持っている人は専門医の指導を受けてから取り組むのが鉄則です。 本人は、自分の病気を軽く見てしまうことが多いのです

3. 健康管理は自分のために

健康診断では異常が出なくても、心不全などで倒れ、亡くなった例もあります。健康診断の結果はその時点でのことであって、それ以後も異常なしというわけではありません

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